お茶の読み物

第3章【お茶ができるまで】

煎茶・玉露の製造工程図(摘採〜荒茶・仕上げ・出荷まで)

・煎茶・玉露編

宇治に伝わる、煎茶・玉露づくりの工程をご紹介します。※以下は伝統的製法の一例であり、産地や製造者によって異なる場合があります。

【玉露園・煎茶園】

玉露園では、新芽の生育にあわせて覆いをかけ、日光を一定期間さえぎることで、旨味を蓄えたやわらかな葉を育てます。一方、煎茶園は日光を十分に受けて育てるため、爽やかな香りとすっきりした味わいが特徴です。いずれも摘採期になると、手摘みまたは摘採機で新芽を収穫し、すぐに荒茶工場へ運びます。

【荒茶製造工程】

  • 1:ボイラー ― 蒸し工程に使う高温の蒸気を発生させる装置。安定した温度と湿度を保つことが品質を左右します。
  • 2:コンベア ― 摘み取った茶葉を自動的に蒸機へ搬送。短時間で運び新鮮さを保ちます。
  • 3:蒸機 ― 茶葉を一定時間、蒸気で蒸し酸化酵素を止めることで緑茶特有の色・香り・風味を保ちます。
  • 4:冷却機 ― 蒸した茶葉を素早く冷却し、過度な蒸れや変色を防ぎます。
  • 5:粗揉機 ― 茶葉をほぐしながら乾燥。水分を半減させ、形を整える下準備を行います。
  • 6:揉捻機 ― 圧力をかけて揉み、水分と成分を均一にします。抽出時の味の出方が良くなります。
  • 7:中揉機 ― 熱風を当てながら揉みを重ね、水分を飛ばし香りを高めます。
  • 8:精揉機 ― 茶葉を細く針状に整え乾燥。煎茶特有の美しい形ができます。
  • 9:乾燥機 ― 十分に乾燥させ「荒茶」が完成。宇治では農家がこの工程まで担当します。

【仕上げ工程(後火方式)】

  • 10:総合仕上機 ― 大小の葉を切断・分別し、粉茶や茎を除去。均一な形に整えます。
  • 11:仕上茶乾燥機 ― 軽く火入れし、香りを引き出します。宇治茶特有の上品な香りがここで生まれます。
  • 12:選別機 ― 茎や古葉を取り除き、艶やかな茶葉に仕上げます。

商品完成(玉露・煎茶)

これらの工程を経て「玉露」や「煎茶」として出荷されます。玉露は覆い下栽培によるまろやかな旨味、煎茶は爽快な香りとすっきりした味わいが特徴です。


・抹茶編

抹茶の製造工程図(覆い下園〜石臼挽き・梱包・出荷まで)

京都宇治に伝わる、老舗の抹茶づくりの工程をご紹介します。※以下は伝統的製法の一例であり、産地や製造者によって異なる場合があります。

  • 1:覆い下園でじっくり育てる ― 抹茶の原料「碾茶(てんちゃ)」は、4月頃に新芽へ覆いをかけて日光を遮り、旨味を蓄えます。
  • 2:茶摘み ― 覆いをかけて3〜4週間後、葉が育ちすぎる前に摘採。手摘み碾茶は特に風味に優れます。
  • 3:蒸し ― 酸化酵素を止めて鮮やかな緑を保ちます。蒸さずに発酵すると紅茶などになります。
  • 4:攪拌・冷却 ― 蒸した茶葉を風力で舞い上げ、重ならないように冷却。「あんどん」で散茶します。
  • 5:碾茶炉で火入れ(乾燥) ― 揉まずに乾燥。葉の形を保ったまま火入れし「碾茶荒茶」となります。
  • 6:選別・仕上げ ― 茎や葉脈、古葉を除去し、均一な原料に仕上げます。
  • 7:審査・合組 ― 茶師が香り・味・色・艶を審査し、最良のバランスを取るためブレンドします。
  • 8:保管と熟成 ― 低温・低湿で熟成させ、旨味がまろやかに。出荷前に石臼で挽きます。
  • 9:石臼で碾く ― 石臼でじっくり挽くことで、なめらかで上質な抹茶粉が完成します。

※加工用や業務用の抹茶は、石臼ではなく粉砕機で粉末化される場合もあります。