お茶の読み物

第1章【お茶の基礎と分類】

お茶農園の風景(覆下栽培と露地栽培のイラスト)

お茶は世界各地で親しまれ、家族のだんらんや休憩など暮らしの場面に寄り添ってきました。
分類は栽培法・産地・製造法の違いによりますが、いずれも同じ「※チャノキ」から生まれます。
違いの要は製法、すなわち摘採後の酸化の度合いになります。なお、麦茶やハーブティーなどはチャノキ以外の植物を原料とする飲み物です。

※チャノキ:ツバキ科の常緑樹。小葉の中国種と大葉のアッサム種があり、日本では主に中国種系品種が用いられます。

1.栽培方法と農園について

露天茶園

覆いをせず日光の下で栽培。遮光しないことで青々しい香りや冴えた渋みが出やすく、地域・品種・製造の違いがそのまま個性に反映されます(煎茶の基調)。

覆下茶園

覆いの中に棚をつくり、寒冷紗やよしずで日光を遮断。収穫前に長め(おおむね20日前後)の被覆を行うと、渋みのもとであるカテキンの生成が抑えられ、うま味成分テアニンが活きた濃厚な味わいになります(玉露など)。

直かぶせ

寒冷紗などで茶園を直接覆う。被覆は玉露より短く(概ね1週間前後)設定されることが多く、玉露の厚みと煎茶の軽快さを合わせた味わいが出ます(かぶせ茶)。

防霜ファン

新芽が霜の被害に遭わないように上空の暖気を撹拌して茶株面を保温する装置。逆転層の暖かい空気を吹き降ろす仕組みで、運転温度や配置は各地の技術指針に基づいて設定されます。

2.お茶の種類

① 不発酵茶(熱処理で酸化を止める)

・覆下茶園育ちのお茶

抹茶の画像

抹茶

栽培方法は玉露と同じ。生葉を蒸し、揉まずに乾燥させて、てん茶(碾茶)に。石臼や粉砕機で粉末状に仕上げる。[主な産地]鹿児島県、京都府、静岡県
抹茶は「てん茶を挽いたもの」という関係で、てん茶は“蒸す→揉まない→乾燥→茎や葉脈を取り除く”工程で定義されます。

玉露の画像

玉露

収穫前の約20日間、寒冷紗やよしずなどで直射日光を遮って栽培。針のように細く長い茶葉が特徴。[主な産地]三重県、京都府、福岡県
光を制限すると渋み成分が作られにくくなり、テアニン由来の旨味とまろやかさが前面に出ます。

かぶせ茶の画像

かぶせ茶

収穫前の約10日間、直射日光を遮って栽培。玉露の旨味と煎茶のスッキリした風味をあわせ持つ。[主な産地]三重県、奈良県、静岡県、福岡県
玉露より短い被覆により、旨味と爽やかな後味のバランスが生まれます。淹れ方の湯温調整で甘みからキレ味まで幅広く楽しめます。

・露天茶園育ちのお茶

煎茶の画像

煎茶

日本で最も一般的に飲まれている緑茶の代表格です。収穫した生葉を素早く蒸して酸化を止め、揉みながら乾燥・整形して針状に仕上げるのが基本。爽やかな香りとうま味、ほどよい渋みのバランスが特徴で、品種・産地・蒸し時間や火入れの違いで多彩な個性が生まれます。生産面でも主要茶種ですが、国内の栽培・生産は近年減少傾向にあります。

深蒸し茶の画像

深蒸し茶

深蒸し煎茶とは、通常の煎茶よりも2〜5倍ほど長く蒸すことで、葉の芯まで熱が入り酵素が失活し、葉組織がほぐれて細かくなる煎茶です。これにより成分が素早く抽出されやすく、渋みは穏やかに、うまみとコクが強まり、水色は深い緑になります。微粉が茶液に混ざるため「渋みも美味しく」感じやすいのも特長です。

番茶の画像

番茶

新茶(一番茶)を摘み取ったあとに伸びた二番茶・三番茶、秋冬番茶など。緑茶飲料の原材料にも。地域の作法や用途による幅が大きい“日常茶”の総称で、仕上げ・再加工に回るケースも多く見られます。

④ 出物(副産物)

茎茶の画像

茎茶・粉茶

仕上げ工程で選別された副産物。形状や部位で種類分けされる。高級茶の茎茶は、「かりがね」として珍重。粉茶は、寿司屋の「あがり」。
用語上は、茎茶=ふるい分けで分離した茎部、粉茶=仕上げ工程でふるい分けられた粉状の茶を指し、地域によって“雁が音(かりがね)”等の呼称も用いられます。