お茶の読み物

付録A【お茶の種類(詳細版)】

1.煎茶

煎茶の茶葉イラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):約75から80℃/茶葉6g/60秒から90秒(上級煎茶の目安:約70℃/茶葉8g/120秒)

水色・外観:透き通る黄金色~黄緑。新茶はとくに鮮やか。針状でまっすぐ。

位置づけ:日本茶の主流。地域や製法で個性が出る。

保存:密閉容器に袋ごと入れ、開閉が多い場合は乾燥剤を併用。

歴史:「煎じる茶」に由来。永谷宗円が青製煎茶製法を確立。

淹れ方:湯冷まし→1分蒸らし→回し注ぎ。

清らかな香りと渋み、後口のほのかな甘み。古くなった煎茶は弱火で炒って自家製ほうじ茶にも。

2.ほうじ茶

ほうじ茶の茶葉イラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):約95℃/茶葉9g/45秒

水色・外観:透明感あるセピア。焙煎由来で葉形は不揃い、褐色。

主な産地:煎茶産地の各地。上級煎茶産地の原料を使う上級品も。

保存:香りが命。少量保管し、香りが落ちたら軽く焙じ直す。

歴史:煎茶・番茶・茎茶などを強火焙煎する製法が1920年代の京都で確立。

焙煎でカフェインの苦みが和らぎ、食中茶やリラックスにも人気。菓子素材としての広がりも。

3.玄米茶

玄米茶のブレンドイラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):約90℃/茶葉9g/30秒

水色・ブレンド:一般に淡黄色(煎茶ベース)。深蒸し・抹茶入りは緑みが強い。茶:炒り玄米=1:1が基本で、白くはじけた「ハナ」を飾りに入れる場合も。

主な産地:煎茶・番茶のブレンドゆえ全国各地。

保存:匂い移りに注意。開封後は早めに。撹拌して偏りを防ぐ。

歴史:昭和初期の京都で、割った鏡餅を炒って茶に混ぜたのがはじまりと伝わる。

日本らしい"和のフレーバーティー"として海外でも親しまれる。

4.茎茶(Kukicha/棒茶・雁が音)

茎茶(棒茶)のイラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):約90℃/茶葉6g/30秒

味と使い方:香りが高く甘みも豊富。ブレンドの骨格づくりに重宝。玉露の茎は雁が音(かりがね)と呼ばれ珍重される。

外観:茎主体で白~淡い緑の棒状。

主な産地:煎茶・玉露の仕上げ産地(静岡、京都ほか)。金沢の加賀棒茶(茎のほうじ茶)も有名。

保存:若々しい香りを保つため密閉・低温。冷蔵庫の匂い移りに注意。

淹れ方:1–2分蒸らし→回し注ぎ。

5.釜炒り茶

抽出条件:約90℃/茶葉9g/120秒茶葉が開きにくい時は温度や抽出時間をやや上げる。

水色・形状:蒸さずに釜で炒るため黄金色寄り。葉は半球状にカールし、独特のよじれ。

主な産地:佐賀・嬉野、熊本、宮崎など九州の自然豊かな地域。

保存:釜香(かまか)を守るため密閉・冷暗所。

歴史:中国から伝わった炒り製の流れを汲むとされ、九州で発達。

淹れ方:湯冷ましした湯を注ぎ約30秒→回し注ぎ。

6.粉茶

粉茶のイラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):約95℃/茶葉4g/30秒

使い勝手:「旨い・安い・早い」の代表。寿司屋の「あがり」にも。蒸らしは不要で、さっと淹れてキレよく。

原料:煎茶・玉露の製造過程で砕けた細片の寄せ集め(派生茶)。

保存:こぼれやすいので袋口をしっかり閉め、さらに遮光缶へ。

淹れ方:目の細かい茶こしに直接入れ、円を描くように湯を注ぐ。

7.番茶

番茶の茶葉イラスト

抽出条件:3g/130ml、90–100℃。大きめ急須で30秒。

水色・外観:薄い黄色。大きめの葉や茎など形状がさまざま。

定義:一般に二番茶以降の葉を使った日常茶。地域により作り分けや呼称も幅広い。

主な産地:煎茶産地のほぼ全域。

保存:大袋になりやすいので、遮光できる大きめ缶などで密閉。

淹れ方:温めた茶碗→熱湯注ぎ→回し注ぎ。素朴でたっぷり飲める、家庭の定番。

8.京番茶

抽出条件:やかんで煮出しが向く。目安は1Lに対して15g、沸騰後5–10分。

特徴:京都宇治地方の独特な"いり番茶"。蒸して揉まずに乾燥し、さらに焙煎するため、大きな葉と茎の形が残り、スモーキーで香ばしい風味。

飲用シーン:さっぱり飲みやすく、家庭の日常茶として定着。カフェインが少なめとされ、子どもや高齢の方にも好まれる。

一番茶・二番茶など:一番茶(4月末~5月上旬)、二番茶(6月下旬~7月)、三番茶(7月末~8月上旬)という季節の区分がある。

水色・外観:透き通った茶色。葉は大きくダイナミック。

9.玉露

玉露の茶葉イラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):約55から60℃/茶葉8g/120秒から150秒

特徴:端正な細長い葉。爽やかで艶のある鮮緑色。水色は高級品ほど抹茶のように深く、京都の玉露は八女より淡めとされる。

玉露は本来「露の玉」のように丸めたと伝わるが、現在は棒状仕上げ(明治初期に辻利右衛門が完成といわれる)。京都には仕上げで葉を丸める「板ずり」も。

主な産地:福岡県八女・星野村、京都、静岡。

保存:密閉・遮光・低温。開封後は2週間ほどで飲み切るのが理想。

名前と歴史:江戸の茶商「山本山」六代目・山本嘉兵衛が1835年に宇治で考案したとされる説が有力。「玉の露のような旨み」からの命名説も。

淹れ方:湯冷まし→急須・茶碗を温める→50℃で2分→少量ずつ回し注ぎ、最後の一滴まで。

摘採前約20日間の被覆でテアニンが保持され、独特の甘みと「覆い香」。

10.抹茶

抹茶のイラスト(粉末)

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):80℃/2g/点てる

色と質感:深い緑のさらさらパウダー。石臼挽きは粒子が細かく静電気でダマになりやすいのでふるって使用。色が薄くなったり黄みがかったら古い合図。

主な産地:京都(宇治)、愛知(西尾)。

保存:高温・光・酸化に弱い。開缶後は早めに。

歴史:鎌倉期に栄西が宋から持ち帰った点茶法が起源。

淹れ方:茶杓1杯半→適温の湯→茶筅で泡立て。

濃茶・薄茶があり、原料は被覆栽培のてん茶を石臼で挽いたもの。

11.かぶせ茶

かぶせ茶の茶葉イラスト

抽出条件(湯のみ2杯分の目安):60℃/6g/120秒

水色・形状:透明感のある緑。上級は深い緑。やわらかくよじれた細長葉で茎がほどよく入る。

主な産地:三重、静岡、福岡・八女など。

保存:新しいロットを少量ずつ購入。光は厳禁。

由来:収穫前1週間前後に短期被覆する製法。玉露と煎茶の中間の味わい。

淹れ方:茶碗で湯冷まし→急須→約1分→回し注ぎ。

12.芽茶(Mecha)

抽出条件:2g/70ml、80–90℃。まず80℃で様子見、渋みが気にならなければ高めでも。4人分でも茶葉は6g程度に抑えるとバランスよい。

水色・形状:濃い緑色。煎茶や玉露の仕上げ分別で出る先端の芽が、くるりと丸まった独特の形。

主な産地:煎茶・玉露産地に準ずる(静岡、京都など)。

保存:小分け・密閉。

抽出が早く、渋みとコクが出やすい"濃厚派"。

13.紅茶(和紅茶)

紅茶(和紅茶)のイメージイラスト

抽出条件:2g/150ml、100℃・約3分。

水色・外観:透き通るオレンジ色(品種で差)。国産しょうがと合わせた「しょうが紅茶」など嗜好の幅も。

主な産地:静岡、島根、福岡、鹿児島、沖縄など主に南日本。

保存:緑茶より劣化は緩やかだが、基本は密閉・遮光・防湿。

背景:近年、安心感や多様な国産品種(やぶきた・べにふうき等)で和紅茶の再評価が進む。

淹れ方:温めたポットに茶葉→沸騰湯→3分→温めたカップへ均等に。

◆「読み物 第1章から付録A【お茶の種類(詳細版)】まで」参照元一覧(共通)

農林水産省(MAFF)

作物統計(茶)、お茶の基礎知識、緑茶の種類 等の総合資料

日本茶業中央会/日本茶インストラクター協会

日本茶の種類・定義(煎茶/深蒸し/玉露/かぶせ/碾茶・抹茶/出物 等)、いれ方の一般指針

農研機構(NARO)

ISO/TR 21380「抹茶」関連の技術資料、茶樹品種データ(例:べにふうき 等)

京都府茶業会議所

宇治茶の歴史・種類解説、京番茶(いり番茶)の製法・位置づけ

主要産地の自治体・産地団体の一次情報

静岡県、福岡県・八女市、鹿児島県、三重県、佐賀県・嬉野市、長崎県・東彼杵町、宮崎県、島根県 など(各公式サイト・茶業研究機関・産地団体の資料)

出典(共通)

・農林水産省「作物統計」「茶をめぐる情勢」等の公表資料(過去2カ年の統計・解説)

・公益社団法人 日本茶業中央会・茶業関係団体の公開資料(製造工程・品種・用語)

・独立行政法人 農研機構(NARO)・県茶業試験場の研究成果・技術資料(栽培・製茶)

・都道府県(静岡・鹿児島・京都・三重・福岡 ほか)茶業関連の公式発信(産地情報・銘柄)

・厚生労働省・消費者庁 公表の食品衛生・保存に関する一般的ガイドライン

(注)本コンテンツの数値は特記なき限り2023年産(または過去2年以内)の公的発表値・公表資料に基づく目安です。