お茶の読み物
第2章【茶園の一年―栽培と管理】
茶園の一年は、土づくり・施肥、整枝、被覆、病害虫防除、防霜、摘採が季節ごとに連なります。丁寧に管理された畑で、丹精込めて育てられています。
お茶の品質は「茶葉が一番いいとき」に摘んだかどうかで決まります。気象の変化を見極めながら「最適期」に摘むことが、香味・水色・うま味を最大限に引き出す鍵です。
① 春

1年かけて大切に育てたお茶を摘みとります。八十八夜(立春から数えて88日目。毎年5月初頭ごろ)は新茶(1番茶)の目安とされ、各産地で適期摘採が始まります。
新芽が動き出す「萌芽」の把握が肝心で、各地の試験場は“園内の約7割の芽が動いた日=萌芽期”などの基準で生育を見極めます。
収穫は柔らかな新芽を狙い、品評会用などでは一芯二葉を手摘みするのが代表的です。機械摘みも併用し、シーズン序盤の希少な「大走り」を手摘みで収穫する例もあります。
一番茶 → 二番茶
二番茶は地域差はあるものの、6月下旬〜7月上旬にかけての摘採が一般的(温暖地ではやや早い)で、多くの産地で一番茶収穫からおおむね1か月半前後を目安に収穫時期が巡ってきます。
② 夏
夏はメンテナンスの季節。翌年の一番茶に向けて、茶畑と茶樹をしっかり手入れします。

草とり
高温期は雑草の競合が強くなるため、手取り除草や草刈り、マルチ・有機物投入などで茶株周りの環境を整えます。近年は乗用型管理機に装着する除草機など省力化機械の導入も進んでいます。

水やり(かん水)
梅雨明け以降は少雨に備えます。スプリンクラー設備のある園では、夏季は1回25〜30mmを7日程度ごとなど、土壌水分(pF)と天候で頻度・量を調整します。

中刈り・ならし
数年に1度、樹勢回復や樹形維持のための更新剪枝(中刈り・浅刈り等)を計画的に実施します。時期(例:一番茶後/二番茶後)と整枝の組み合わせは翌春の芽揃いに影響します。

深耕(しんこう)
うね間を深く耕して通気性を高め、根の更新を促す作業です。夏の干ばつ直後などは避け、8月中〜9月上旬といった時期設定や、有機物(堆肥等)との併用が推奨されます。
③ 秋から冬
番茶の収穫後、整枝作業が終わると茶畑は冬眠します。
秋冬番茶
二番茶後に伸びた葉を秋に摘む原料茶で、ペットボトル飲料など加工向け需要に充てられます。

お茶の花
9〜11月にツバキに似た小さな白い花が咲きます。晩秋の茶園に彩りを添える存在です。

お茶の実
受粉後、翌年に種が熟すサイクルで、果実の中に3〜5粒の種子が入ります。「茶の実油(チャ種子油)」の搾油にも利用されます。
冬眠中
雪や霜に耐えながら春の芽吹きに備えます。冬期は土壌改良や資材更新など“静の作業”を行います。
・収穫方法

手摘み
茶葉が一芯二葉の状態で摘むのが最適。機械化が進んだ今でも品評会用や技術継承のために手摘みは欠かせません。

機械摘み
2人で両端を持つ可搬型(バリカン式)や乗用型・自走型などがあり、新芽の伸びに合わせて刈高を調整します。